月経困難症について

月経でお困りの皆様へ
こんな風に思っていませんか?
  • 月経は辛いもの

  • 月経は我慢するもの

  • 痛み止めを
    飲むことが怖い

  • ピルを飲んだら
    妊娠できなくなる

それらは全て誤解です。

もちろん、お薬を乱用することや、
通信販売などで売られているお薬を自己判断で使うことは非常に危険です。

しかし、しっかりと医師の診断を受け、決められた用法・容量を守って服用いただく限りは、
トラブルになることは滅多にありません。

月経がツライと感じておられる方、
ぜひ一度ご相談ください。

月経困難症とは?

月経困難症とは?

月経困難症の主な症状は?

月経の時に起こるツラい症状の全てを「月経困難症」と言い、治療可能な「疾患」です。

月経に伴う症状といえば、お腹が痛い、腰が痛いなどのイメージが強いかと思いますが、実は、その他にも、頭が痛い、お腹が張る、食欲がない、吐き気がする、疲れやすい、イライラする、気分が落ち込む、下痢をするなど様々な症状が出現します。
月経困難症で困っている人はどれぐらいいるの?

月経困難症で困っている人は
どれぐらいいるの?

実際、日本では約900万人の方が月経困難症で困っていると推定されています。しかし、そのうち、実際に医療機関を受診し、治療を受けている人は約6%と非常に少ないのが現状です。

その理由としては「月経はつらいのが当たり前」というものから「仕事が忙しく病院に行けない」というものまで様々です。しかし、月経困難症が女性の社会進出に与える影響は大きく、働く女性の約60%は、仕事に何らかの影響が出ていると言われています。

月経困難症には
2つの種類があります

子宮には特に原因となる病気がない「機能性月経困難症」と、
子宮筋腫や子宮内膜症など症状の原因となる病気がある「器質性月経困難症」です。

  • 機能性月経困難症とは? 子宮に原因となる疾患を認めないタイプで、子宮から放出される痛み物質が過剰に分泌されてしまったり、子宮が若くて硬かったり、子宮の出口が狭かったりすることにより生じます。月経開始1−2日目の症状が強く、10−20代の若い方に見られることが多いです。
  • 器質性月経困難症とは? 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症など、子宮に何らかの疾患を伴うタイプです。月経量が多い場合には、貧血などの症状を伴うこともあります。月経の4-5日前から月経後まで鈍痛が続く場合も多いです。

子宮内膜症や子宮筋腫の可能性も

月経困難症の症状(ひどい月経痛、下腹部痛、腰痛、膨満感、吐き気、頭痛、イライラ)などの症状が現れても、「皆我慢してるんだし...」「今回はたまたまで、次は痛くないかもしれないし...」と、受診が遅れるケースがよく見られます。特に10代の場合、月経痛で医療機関を受診することに抵抗のある方が多いようです。

しかし、月経困難症は、子宮内膜炎や子宮筋腫を原因としていることもあります。どちらも、不妊などの女性の将来を左右するリスクをはらむ病気です。
またたとえそういった病気でないにしろ、日常生活に支障をきたすような痛みを、我慢する必要はありません。また、周囲の人と比べる必要もありません。ご自身で「ひどい痛み」と感じたときにはお気軽にご相談ください。

  • 子宮内膜症/子宮腺筋症

    子宮内膜症は生殖可能年齢の女性の10~15%に発生し、その70%に慢性骨盤痛を生じるといわれています。病態としては、子宮内膜の組織が、子宮内腔以外の部位に発生したものを言います。(子宮筋層内にできたものを子宮腺筋症といいます。) 強い炎症のために月経時の疼痛を引き起こし、その他の症状としては腰痛、性交痛、排便痛、不妊、卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)があります。

    治療法は機能性月経困難症同様、黄体ホルモン補充や、LEP製剤です。
  • 子宮筋腫

    子宮筋腫は30歳以上の女性の20~40%に存在する良性疾患で、多くは無症状ですが、大きさやできる位置によって月経困難症や過多月経の原因となったり、不妊の原因になったりします。 子宮筋腫はできる位置により、
    〇漿膜下子宮筋腫
    〇筋層内子宮筋腫
    〇粘膜下子宮筋腫
    と分類されます。多くは漿膜下子宮筋腫であり症状がないことが多いですが、筋層内や粘膜下だと過多月経になったり、着床不全や流産による不妊の原因になりやすいです。

    治療法は症状によって患者様と相談して決めます。

月経困難症の治療

月経困難症は、もちろん治療可能な疾患です。

月経困難症とは?

その治療方法は、
原因によって異なります。

月経痛を軽減するため、まずは患者様の月経痛が、機能性月経困難症なのか、それとも器質性月経困難症なのかを診断します。

器質性月経困難症と診断された場合には、すみやかにその原因となっている疾患の治療を受けていただきます。

機能性月経困難症の治療

  • 鎮痛剤の服用

    NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)
    (主な薬名:ロキソニン)

    鎮痛薬としてよく使われる製剤ですが、主な作用は痛み物質であるプロスタグランジン類の合成を抑制することです。プロスタグランジンは子宮を過収縮させる働きを持つため、これを抑制することで、月経痛を抑える効果があります。
    プロスタグランジンが合成され始める前から服用することが効果的なため月経が始まる前から飲むことをお勧めします。
    NSAIDsには胃潰瘍の副作用がありますが、過剰内服をしなければ安全に使用できる場合が多いです。空腹時だからといって内服を避けることよりも時期を逸しないで内服することが大事です。

  • 鎮痛剤の服用

    アセトアミノフェン
    (主な薬名:カロナール)

    アセトアミノフェンの作用機序は痛み物質の抑制は弱く、下行性抑制系の賦活化が主です。(足を打った時に「痛いの痛いの飛んでけ~」と撫でてもらうと痛みが少し引いたような感じがするやつです。)
    鎮痛効果はNSAIDsに比べるとマイルドですが、NSAIDsのような胃腸障害や腎障害の副作用はありません。(しかし肝障害には使えません。)
    子宮筋の過収縮を抑えるという意味ではNSAIDsの方が適しています。

  • 漢方薬

    漢方薬は比較的副作用が少なく、どんな患者様でも服用しやすいメリットがあります。 漢方治療医学では、月経困難症の原因を於血(血液が滞った状態)として考え女性の漢方3大処方として、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散があります。患者様の証(漢方における診断)に適したものを処方します。

  • 子宮収縮抑制薬

    (主な薬名:ブスコパン)

    子宮の過収縮による月経困難症に対して、子宮収縮を和らげる作用があります。 疼痛時に内服すると効果がある場合があります。

    これらの鎮痛薬はあくまで対症療法であるため、これらでは緩和されなかったり、対応しきれないような月経困難症には、LEP製剤(低用量ピル)や黄体ホルモン、子宮内黄体ホルモン放出システムなどを使用します。

  • LEP製剤

    保険適用のピル
    (主な薬名:ヤーズフレックス、ジェミーナ等)

    排卵を抑制し、子宮内膜を薄くすることで出血量を減少させ疼痛を改善させる効果があります。月経痛があり月経困難症の診断となれば保険適用で使用できます。 ヤーズフレックスは最大120日連続投与、ジェミーナは最大77日間連続投与できるというメリットがあります。

  • 黄体ホルモン単剤

    (主な薬名:ディナゲスト)

    卵巣機能と子宮内膜増殖を抑制することで月経痛を改善します。エストロゲンが入っていないため血栓症のリスクがなく、これまでピルを使用できなかった人にも使用可能です。ただし不正性器出血が比較的起こりやすいです。(徐々に出血がなくなる方が多いです。)

  • 子宮内黄体ホルモン放出システム

    (主な薬名:ミレーナ)

    他の薬剤は内服ですが、こちらは子宮内に挿入し留置するものです。徐々に黄体ホルモンが放出され、子宮内膜の増殖を抑え、避妊と月経量減少・月経痛の改善効果があります。 挿入後は5年間継続可能です。 ミレーナも抜去後は妊孕性は回復するため、海外でも妊娠歴のない若年層に対する避妊法としても推奨されています。

    ミレーナについて

器質性月経困難症の治療

原因のある月経困難症です。定期的にエコーでの診察を行い、疾患に応じた薬剤の投与を行います。

  • 偽閉経療法

    (主な薬名:レルミナ、リュープリン)

    子宮筋腫や子宮内膜症などの器質性月経困難症のホルモン療法として偽閉経療法があります。エストロゲンを低下させ、月経を止めます。エストロゲン分泌低下により子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症を縮小させる効果があります。副作用としては、更年期症状(のぼせ、ほてり、ホットフラッシュ、抑うつ感等)があり、また長期投与で骨量低下が起こるため投与は6か月未満が原則です。

  • 手術療法

    薬物療法に反応が乏しい場合や、挙児希望があり病変が妊孕性に影響を与えている場合には手術を検討します。(当院では手術はできないため、必要な場合には紹介となります。)

最後に

「病院に行く時間がない」「婦人科診察は苦手」そう言ったお声はよく耳にします。
しかし、毎月月経の度に苦しい時間を過ごすのはもうやめにしませんか?

少し勇気を出して、相談に来ていただけましたら、あなたを精一杯サポートさせていただきます。

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